トランプタワー
私達は愛し合った
ただただ体を重ねただけの
割り切った関係だと、そんな軽い気持ちでないと
お互いが思っていたはず、感じたはず…
違う?
分からない。
家庭ある家へと帰って行った彼のことを切ない気持ちで見送る…
直後のメール
「今日はありがとう、楽しかったよ、嬉しかった。別れたばかりなのにすぐにでも会いたいよ、ギュウってしたい、また抱きたい」
「私もだよ… ねぇ、 私のこと 好き…?」
「当たり前だよ 大好きだよ」
会えない時間はそんなやり取りがまた続く
私は、彼が私に入っている時の違和感をそのままぶつけた
「気持ち良かったの、本当よ?でも…」
「でも 何?」
「うーん、気持ち良かったけど、感じなかったの。翌朝のエッチはより気持ち良かったし、すっごく感じたの。あなたを直に感じたい…。ゴムは しないで欲しい…ダメかな…そんなのダメだよね……」
「うん、分かった。俺も直に感じたい、感じて欲しい」
私達は
時間が許す限り
精一杯の愛情表現をメールで確かめ合い
また体を重ねて本気の愛を肌で感じる機会が増えた
ある日彼に抱かれている最中
ずっと言いたかったが、ずっと言えずにいた言葉を 勇気を振り絞って言った
彼をグッと引き寄せた私は彼の耳元で言った
「好き…」
メールでは散々交わした言葉だが直接は言えなかった、何故だろうね…
「好きだ…」
彼もそう言ってくれた
「本当? 本当に私のこと…好き?」
「うん、もちろんだよ 大好きだ」
文字の好きと、口から出る好きとでは重みが違う、そう感じた、嬉しかった、泣きそうだった。
お互い、周りが見えていないな…
突っ走り、燃え上がっている二人をふと客観的に見つめる私。
ホントにこのままで大丈夫なのかな…
この不安は…
私達の愛の形は、今にも壊れそうなトランプタワー。ふっと息を吹きかけるだけで簡単に壊れてしまう
そんな感じかな
この頃から、私の彼に対する呼び方(さん付け)はなくなり、彼から苗字で呼ばれていた私の呼び方も、名前に変わった
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